デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ベッドから身を乗り出し、シュリが手を差し出す。

まだ息が整わないまま、桜は頭を横に振った。

白い体をぺたんと床につけて座る彼女を、じっと強い目で見ながら、シュリは立ち上がった。

「……もう一回言うぞ。危ないから、それを渡せ」

「いやです……」

自分に向けられる表情が怖くて、カタカタと刃先が震えるが、桜ははっきりと言った。
それを聞き、ふう、と一つため息をついた。

「じゃあ、やってみろ」

「え?」

「刺してみろよ、ほら」

両腕を軽く広げ、その引き締まった体を惜しげもなくさらして、桜の方へ一歩踏み出した。

「あ……」

「どうした?俺は逃げないし、反撃もしないぞ。お前を傷つけないと言っただろ」

不気味なほど静かな表情で見据えられた。
さっきまでの、熱に浮かされたような艶っぽいものではなく、冷静な武官の顔。
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