デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「……っ……」

こくん、と喉をならし、手の震えが大きくなった。

シュリが薄く冷たく笑う。

「無理だろ?お前に、人が刺せるわけがない」

「………」

「自分の手を汚す覚悟のない奴が、武器なんか持つな。いたずらに自分も相手も苦しませることになる。一番残酷な事だ」

青い顔の桜を見る目が、少しだけ優しくなった。

「お前は、俺に抱かれて、守られて、変わらず笑っていればいいんだ。ほら……」

その白い腕を取ろうとした時、「いいえ」と言ったかと思うと、その刃がくるりと返された。

ピタリと自分の喉元に白刃を当てる彼女を、シュリは目をむいて見た。

「覚悟ならあります」

「桜……」

「今すぐ、私を王宮へ帰してください」

静かに、しかしはっきりとしたその言葉に、シュリは顔を強張らせて押し黙った。
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