デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
王は、静かに身を起こした。
眠っていたわけではないが、少しぼんやりとしていたらしい。
艷やかな髪が、サラサラと裸の胸や肩にこぼれた。深宮の数ある一室だが、どこでも庭が眺められるように作ってある。
格子づくりの障子から、月の青白い光が、彫像のような上半身とその横顔を浮かびあがらせていた。
ふと、その目線を自分の左下に落とす。
若い女が寝息を立てている。
華奢な腕をしていたらしいと、今初めて気がついた。白い背中と顔に、長くて柔らかそうな髪が散っていた。
つい今しがたの事なのに、顔も、髪の色さえ覚えていない。顔にかかる髪を払って、顔立ちを確かめたいとも別に思わなかった。
花があって、愛でたいと思った。
花も嬉しそうに喜んだ。
だから愛でた。
それだけのことだ。
立ち上がり、夜着をまとう。ガウンや浴衣のように前で合わせて着るもので、柔らかく肌触りがいい。
腰紐を締めて、そっと障子を開けた。
いつものように星が夜空を彩っている。
“きれいな絵ですね”
“また、お話します”
少し遠くに、客用の宮が見えた。
そっと、左頬に触れた。とっくに痛みも赤みも引いているが、まだしびれているような感覚に陥った。
眠っていたわけではないが、少しぼんやりとしていたらしい。
艷やかな髪が、サラサラと裸の胸や肩にこぼれた。深宮の数ある一室だが、どこでも庭が眺められるように作ってある。
格子づくりの障子から、月の青白い光が、彫像のような上半身とその横顔を浮かびあがらせていた。
ふと、その目線を自分の左下に落とす。
若い女が寝息を立てている。
華奢な腕をしていたらしいと、今初めて気がついた。白い背中と顔に、長くて柔らかそうな髪が散っていた。
つい今しがたの事なのに、顔も、髪の色さえ覚えていない。顔にかかる髪を払って、顔立ちを確かめたいとも別に思わなかった。
花があって、愛でたいと思った。
花も嬉しそうに喜んだ。
だから愛でた。
それだけのことだ。
立ち上がり、夜着をまとう。ガウンや浴衣のように前で合わせて着るもので、柔らかく肌触りがいい。
腰紐を締めて、そっと障子を開けた。
いつものように星が夜空を彩っている。
“きれいな絵ですね”
“また、お話します”
少し遠くに、客用の宮が見えた。
そっと、左頬に触れた。とっくに痛みも赤みも引いているが、まだしびれているような感覚に陥った。