デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
王が厳しい顔をして黙り込んだのを、単に身の安全の心配をしているのだと思いこんでいる桜は、ガンガン地雷を踏みまくる。

「カナンはきっと街にだって詳しいですよね?それに頭もいいし、頼りになるから、私の髪の色が分かってしまわないように、ちゃんと考えてくれます。
ちょっとぶっきらぼうなところがあるけど、すごく優しくしてくれるんです。この間だって、私が手をつないで欲しいって言ったら、頑張ってつないでくれたくらい。
だから、安心してください王様、カナンと一緒だったら大丈夫です」

手をつないだくだりでもうイライラのピークを超えた王は、「ダメだ!!」と言おうと顔を上げて桜を見たが。

自分を説得するうちに力が入ったのか、思わぬ至近距離で、桜が自分を見上げていた。

すがるような、潤んだ瞳。前のめりになった胸元からは、ふっくらとした影が誘うようにのぞいている。

「……お願い、王様……」

小さく開かれた唇から、声が漏れた。

「…………っ!!」

目を見開き、パッと視線を外す。頬に、熱が集まるのが分かる。

反則だ………こんなの。好きな娘に、こういうふうに懇願されて、むげになどできるわけがない。

この私が、出会ってたった数日の娘に、こんなに翻弄されるなんて。

しかも恐ろしいのは、無意識にこれをやっているということだ。
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