デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「……上に立てば立つほど、孤独になるものだからな。まして神児はまだ子供だ。感情の揺れも多かろうよ」

静かに言う王を、桜は振り仰いだ。

「そう、何だか守ってあげたくなる感じでした。きっと、どんな男の人も好きになっちゃうと思います」

「……」

「すごい人のはずなのに、全然偉ぶったところがなくて。あ、手も繋いだんですよ。すごくいい匂いがして、きれいな手でした。それからね、王様」

わずかに眉をしかめた王の表情に気づかず、桜は続ける。

「名前も教えてもらったんですよ、神児さんの。ほんとは誰にも知られちゃいけないらしいから、あだ名でエヴァさんて呼ぶことにしました」

「名を明かしたのか?………神児が?そなたに?」

驚きのあまりに、その紫の瞳が揺れた。

「ええ。仲良くしたいと思った人に教えなさいって、エヴァさんのお父さんとお母さんが言ったんですって。すごい美人の友達ができました」

「…………」

厳しい顔で黙り込んだ王は、黙々と手綱を握っていた。

心配していたから、無事に帰って来たことを喜んでくれるかと思っていた桜は、あれ?と後ろをうかがった。

「……軽率な。神児が自らの名を他人に教えるとは。万が一『魔』にでも知られたら、ただではすまぬ」

「え?」

「あ奴らには魔力を使う者もいるからな。名前を知られたら、体を乗っ取られるやもしれん」

「でも、私…誰にも言いません」

「そなたはそのつもりでも、今王都に『魔』が潜り込んでいるのだ。神児とて、それを知らぬわけではあるまいに」

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