デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
蒸し暑さを感じる夜風を受けながら、二人を乗せた馬車は王宮の門へと走っていた。


互いに言葉は発しない。

シュリの眼差しが、向かいに座る桜の髪や白い肌、伏せられたまつ毛をじっと見つめていた。

それはまだ熱を帯びて、桜への断ち切れない恋慕をはっきりと示していた。

桜もシュリの目線に気づいてはいたが、どんな顔をしていいかも分からずに、ずっと自分のサンダルの先を見つめていた。

思えば、シュリとこんなに押し黙ったままなのは初めてかもしれない。

王都への旅路の間も、言葉がわからないのに、シュリは自分によく話しかけて、いつも陽のような大きな笑い顔を向けてくれていた。

それが今は鳴りを潜め、表情はなく、ただただその目だけが、未だにすがるように自分を見ているばかりだ。

………恩を仇で返す。

自分にピッタリの言葉だと、桜は思った。

また唇を噛みしめると、やるせなさと申し訳なさでツンと鼻の奥が痛みだす。
それが涙に変わる前に、深く息をついた。

とんでもなく長いような、あっという間なような時間のあと、馬車は王宮の門の出入り口に到着した。
< 992 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop