MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
「どういう関係って……ちょっとした知り合いだ」

「あら、恋人じゃないの?」

「君が思ってるような関係じゃない」

 そうだ。別にあの子とはそんな関係ではない。
 少し話したくらいで、なぜそんな疑いをかけられるのかわからない。
 しかも自分の夫に、他に女ができたのかと涼しいを顔して聞いてくる凛々子は、やはり凡人ではないなと思う。

「堂々と愛人を作るのはやめてね。やるならバレないように」

 なんだよ、今日はやけに突っかかるじゃないか。
 ホテルではスタッフの目があるからか、なにくわぬ顔をしていたというのに。
 今になってフフフとほくそ笑む凛々子を見ていると、仕事で疲れた体が余計に疲れてくる。
 一瞬目が合ったが、俺は凛々子からフイッとその視線を逸らした。
 やるならバレないようにって……普通の妻は言わないだろう。

 といっても、俺たちは世間で言うところの“普通の夫婦”ではない。
 俺は少なくともそう思っている。その自覚も十分にある。

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