傍にいてギュッとして
目の前が、暗くなった。

「よっ!元気?」

目の前に現れたのは、フードの男。
全身、真っ黒の、恐怖の男。フードで顔は隠れているが、その裾からは真っ白い手が見えていた。

…お兄ちゃんを殺した、あの手。


「なんでそんな怖がってんだよ。」

「だ、だって、あなた、お兄ちゃんを殺した……」

「殺してないって人聞きのわるい。」

「もう逢えないって…お葬式もして、お墓に…」

「でも生きていただろ?」

な、なんで知ってるの?

「廊下で、会ってただろ?」

私は一歩後ずさりした。このままここに居てはキケンだと、本能が叫んだ。

「逃げるな。」

冷たい手に掴まれた。腕が凍るかと思った。
そのまま、もう一つの腕が私の首筋をなぞった。
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