命の灯が消える、その時まで
診察室の奥にあるエレベーターに乗り込み、「4」のボタンを押す。
ブーンという低い音とともに、エレベーターが上昇した。
ボーッと鏡に映る自分を見てみる。
相変わらず根暗そうな、ぼやっとした顔の私。
長い前髪も、胸元まである真っ黒なお下げ髪も、なお一層私を暗く見せる。
赤い縁のメガネの奥に覗く瞳は、自信なさげに揺れていた。
…どうしてこうなっちゃったんだろう。
いや、始まりは確かにあったんだ。
何年も経ったのに、真っ黒に塗りつぶしたはずなのに、いくら黒を重ねても消えない、嫌な記憶。
いっそ透明になってくれればよかった。
そうしたらこんなに黒を重ねなくて済んだのに。
塗っても塗っても塗りきれない、隠しても隠しても隠しきれない、こんなことで悩まなかったのかもしれない。