僕は君に夏をあげたかった。
夜の海
それから数日はどうしていたのかわからない。

おじいちゃんが何かを私にずっと話しかけてくれていた気がする。

でもちっとも覚えていない。

ご飯を食べたり、寝たりした記憶も曖昧だ。

ただ、佐久良くんの姿を何度も何度も見た気がしたから、夢は見ていたのかもしれない。


「……佐久良くん」


部屋に寝転がり、ほんやりと天井を見ながら呟く。

すると勝手に涙が目からあふれだし、流れた。

どれだけ泣いたら涙は出なくなるのだろう。

涙が枯れるなんて言葉、うそだったんだ。


………もし、このままずっと泣き続けていたら

私の身体も涙のように水に溶けてなくなってしまわないかな。

そうして、佐久良くんのところに行きたい。

佐久良くんと一緒にいたい。


「………死にたい」


それは、あまりに自然に口から出た言葉。

涙と一緒に薄暗い部屋に消えていく。


「……死にたい……死にたい……佐久良くんのところに行きたい…………死んでしまいたい………っ」


一度口に出すと止まらなかった。

せきを切ったようにあふれだす言葉。


本当はずっとそう思っていたのかもしれない。

この町にくる前から。ずっと。



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