僕は君に夏をあげたかった。
この世界
8月の終わり。

私は大阪に帰ることになった。


あずささんと2人。

くろしおで天王寺へと向かう。

駅にはおじいちゃんが見送りにきてくれた。


「………麻衣ちゃん、ほいだら、また遊びにきてや」

「うん。また絶対に来るね」

「……あずささんと、うまくやるんやで」


おじいちゃんは声をひそめ、私にだけ聞こえるようにそう言った。


「あんな、これは秘密にしてくれって言われてたことやけど……麻衣ちゃんのお父さん言ってたで。

麻衣子は家事ばかりして、普通の女のこみたいに遊べていない。それじゃああまりに可哀想だ。今度、高校生になるときには、あのこをもう少し家事から解放してやりたい。普通の女のこみたいに、友達とたくさん遊んでほしいって。

だからな、つまり、再婚は麻衣ちゃんのためでもあったんやで。もちろん、あずささんのことを愛しているんもほんまやろうけど」

「………お父さん………。

でもさ、そんなこと言って、私が新しいおかあさんとうまくやれなくなる可能性を考えなかったのかな」


素直になれずそう憎まれ口をたたくと、おじいちゃんがわらった。


「あほやな、麻衣ちゃん。
あんたのおとうさんが、そんな女の人を再婚相手に選ぶかいな」


そう言って…………。




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