僕は君に夏をあげたかった。

「……佐久良、くん？」

「……松岡さん……」


戸惑った中に浮かぶ、真剣な眼差し。

佐久良くんが私を真っ直ぐに見ていた。


「……な、なに？」

「俺……俺は………」

「………」


佐久良くんは何を言うのだろう。

突然泣き出した理由を聞いてくるのか。

自分のせいで泣いたと思い、謝ってくるのか。

それとも……彼は優しさから、理由はわからずとも慰めてくれるのかもしれない。


……でも、どれも嬉しくないかもしれない。


なんて勝手なことを思っていた私に、佐久良くんが言ったのは思いもよらない言葉だった。


「………俺、君を描きたい」

「………え？」

「この町にいるあいだ、松岡さんのこと描かせてほしい」

「………!?」


本当に予想外の申し出に、私は言葉を失い立ち尽くした。