僕は君に夏をあげたかった。
「……おじいちゃん、本当に佐久良くんのこと何も知らないの?」


夕食の時間。

おじいちゃんに、もう何度めかわからない質問をする。

おじいちゃんはこれまた何度めかわからない『知らんよ』という返事を返した。

おかずの煮物を、少し焦ったように口に放り込む。


「絶対うそ。この町に住んでいる人のことは、お互い大腿わかってるんでしょう。
それに、以前に佐久良くんが療養していること、おじいちゃんが教えてくれたんじゃない。

ねえ、おじいちゃん、本当は何か知ってるんじゃないの?もしかして佐久良くん、何かあったの?療養しているって、本当はすごく体調がよくないんじゃ……」

「ワシは知らんよ。何にも知らん」

「……うそ」

「麻衣ちゃん。夏くんは麻衣ちゃんに何も言うてへんかってんやろ。住んでいる場所も、療養のことも。何やかんやでずっと一緒におったのに、聞いへんかったんやろ」

「……う、ん」

「それは、夏くんが麻衣ちゃんに知られたくないと思ってるからやないか。
……そうやとしたら、ワシが勝手に言えるわけない」

「お、おじいちゃん……っ!」

「それより、明日は青海祭りやで。浴衣を出してやるから楽しんできたらどうや?」


青海祭り……

佐久良くんと約束していた。


「……行けるわけないじゃん。佐久良くんがどうしているかわかんないのに」

「そうか……海からの花火、きれいやねんけどな」

「知らない。……ごちそうさま」


私は食事を半分くらい残したまま片付け、部屋に戻った。

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