僕は君に夏をあげたかった。


「……佐久良くん」


佐久良くんに会えなくなって、どうしようもなく心細くて寂しい。

でも一番引っ掛かっているのは、彼の身体のことだ。

中学時代から身体が弱くて、学校も休みがちだった佐久良くん。

再会した今も療養中で、この真夏にそぐわないほど肌は白いし、身体は細い。

何よりあの儚い雰囲気。

今にも消えてしまいそうだ。

シジミの最後の夜、月明かりを浴びたあの儚い姿に、佐久良くんがダブって見えたのを思い出す。


…どうしよう。もし佐久良くんもシジミのようになってしまったら………


「……バカバカバカ。そんなこと絶対にない。あるわけないんだから……!」


そう思いながらも、心の底では不安で仕方ない。


佐久良くんがいなくなったらどうしよう

もう二度と会えなくなってしまったら

私は……生きていけない。

佐久良くんのいない世界で、ひとりでなんて、絶対に耐えられない。


生きていけるわけがないよ。



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