結婚も2度目だからこそ!
課長の話が終わり、みんなはそれぞれ席に戻って仕事をし始める。
だが、ひとり立ったまま動かない男性社員がいた。

その社員は目を大きく見開いて、私を見ている。
それに気付いた私は、その男性に向けて思わず怪訝な顔を浮かべた。

私の顔に何か変なものでもついているのだろうか。
いや、でもそれなら他の人たちも気付くだろうし……。

その男性は何となく、どこかで見たことのある顔だった。
だけどどこで会ったのか、思い出せない。


「鳴嶋さん、河合玲子です。これからよろしくね」

「あ、はい!よろしくお願いします」

河合さんは私の元へ来てそう自己紹介すると、席へ案内してくれる。
席に向かう途中、チラッとあの男性社員に目線を向けたが、その男性は既にパソコンに向かい仕事をしていた。


……さっきのはなんだったんだろう。

そう疑問が残るが、仕事中だし聞きに行くことはできない。
初日からそう目立った行動をするわけにもいかない。

私は頭の中をなんとか切り替え、仕事へ集中するようにした。


午前中は一通りの仕事の内容を、河合さんに説明してもらうだけで終わってしまった。
企画書の作成補助、企画書のコピー、そして社員へのお茶くみなどの雑用などなど。

他の社員のフォローを、今まで河合さんひとりでやっていたのだという。


「あなたが来てくれて本当助かるわ。近々新しい商品の企画書を作成することになっていて、それが大きなプロジェクトで、作成する量もハンパないの。ひとりだったら回らなかったわ」

「そうだったのですね。じゃあ尚更早く仕事を覚えないと……」

「ゴメンね、そうしてくれると嬉しいわ。……ああ、もうこんな時間ね。鳴嶋さんはお弁当?」

「は、はい。初日なので仕様が分からないので、今日は持ってきました。あ、あのすみません、トイレに……」

「ああ、いってらっしゃい。食堂が三階にあるけど、お弁当ならここで食べても構わないから。私は持ってきてないから食堂に行くわね。早く行かないと席がなくなっちゃうの」

そう言って河合さんはさっと準備を済ませ、部屋を出ていく。

お昼も一緒になるものだと思っていたから、少し拍子抜けしてしまった。
……まあ、お昼くらいは好きにしたいよね。

私も午前中いっぱい気を張っていたから、少しリラックスしよう。

そう思い、私はトイレに向かった。
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