結婚も2度目だからこそ!
その言葉通り、それからは離婚の話は一切出てくることはなかった。

高校の部活の話、大学での話。そして今の職場の話。
色んなことを語り合いながら、飲んで食べて。

気付いたら日付の変わる時間になっていた。


「悪いな、こんな時間まで付き合わせちゃって」

「いえ、こちらこそごめんなさい!でもとても楽しかったです!」

「いやいや、俺も楽しかったよ。また一緒に飲みに行こう」


そう言って、先輩はちょうど走って来たタクシーに手を上げる。

「送っていくよ。こんな遅い時間にひとりで返すわけにはいかないから」

「え、でも先輩」

「気にしないで。いいから乗って」

先輩は私の背中を押して、タクシーに乗るように促す。
断る訳にもいかず仕方なくタクシーに乗ると、先輩もそのまま乗り込んでタクシーは走り出した。

思ったよりも近い距離に座っていて、先輩の腕が私の腕にあたり、心臓がうるさくなる。

アルコールのせいかとも思ったけれど、そうではないらしい。
久々に高鳴り続ける鼓動は、降りて家に帰ってからも続いていた。

なぜってそれは、タクシーから降りて帰りしな、私に対して浮かべた笑みがとてもキラキラ輝いて見えたから。


優しい笑みに、「おやすみ」の言葉。

たったそれだけなのに、何故かとてもドキドキしてしまって……。


それは久々に味わう感覚。


まさか、ね。
……と思いながら、その夜はなかなか寝付けなかった。

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