結婚も2度目だからこそ!
先輩は大きく息を吐く。

何故か、悲しそうな表情を浮かべていた。


「どうして先輩がそんな顔になるんですか。いいんですよ、もう終わったことだし」

「いや、軽率に惨めなんて言ったことに後悔してるんだ。辛い思いをした京香ちゃんに、優しい言葉をかけてやらなきゃいけないのに、ふざけてしまったことに凄く後悔してる」

先輩はそう言って頭を抱えていた。

そこまで落ち込む必要はないと、逆にこっちが申し訳なくなる。
私は慌てて先輩を慰めるような言葉を返す。

「本当にいいんです、先輩。後悔しないで下さい。次はきっといい結婚生活がおくれると思いますから」


次なんて本当は全く考えてもいないし、実際あるかどうかも分からない。
それが本音ではないけれど、先輩には私のことで落ち込んで欲しくはなかった。

だから嘘でも、先輩にはそう話した。


そんな私を、先輩は切なそうな笑みを浮かべて見つめた。
そして、手を伸ばして私の頭に軽く乗せる。


「……次、か。そうだな、きっとそうなると思う。次はもっといい男が出来て、幸せな結婚生活が待っているよ」


触れた頭のてっぺんから、じわりと温もりが広がる。
その温もりは、冷え切った心の中まで温かくなるようだった。


――先輩の優しさ。

それが身に染みた。

「ありがとうございます、先輩」

「……忘れろ。そんな下らない男なんて忘れるくらい食って、飲め!……明日に響かないくらいにな」

「はい、言われなくても」

「よし、もうこの話は終わり!これからは楽しい思い出話をしよう。こんな暗い話をするために飲みに来たんじゃないからな」
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