結婚も２度目だからこそ！
――ドクン、ドクン。

ボタンを押して、既に画面には内容が表示されているはず。
けれど、それをなかなか見ることができず、目を瞑ったまま開けることができずにいた。

その間も、心臓がうるさいくらいに鳴り響いている。
周りには人がたくさんいてとても賑やかなのに、それが聞こえないくらい鼓動がうるさい。

早く読み終わって、ホールの中に入らなければ。
せっかく先輩が私のためにソロを吹いてくれるって言ってたんだもの、こんなことで聴けなくなるのは絶対嫌だ。

そう思い、私はゆっくりと目を開けた。


焦点がゆっくりと定まって、ぼんやりとして見えていた画面がハッキリとしていく。


――そこには、こう一言書かれていた。



『寂しい』



思わずカッとなって、携帯を投げたくなる衝動に駆られ、思わず立ちあがった。

その瞬間、周囲にいた人たちが目に入って、ハッと我を取り戻す。



納得できないその一言。

心の中は、怒りの感情が気持ち悪くなるくらいうねっている。



……寂しい？
なにが寂しいなのよ！

その寂しい原因を作ったのは誰！？
全て圭悟が蒔いた種じゃないの！！


目の前に圭悟がいたら、そう叫んで掴みかかっていたかもしれない。
罵倒して、気が済むまで彼を叩いて、泣き叫んでいたかもしれない。

そのくらいメールの一言は、自分を乱すにはじゅうぶんな言葉だった。


どこにもぶつけられないその怒りは、涙となって溢れていく。
だけど、流したくないと必死に上を向いてひっこめようとした。


アイツのことでもう泣くのは嫌。
こんなことで涙を流すのだけはしたくない。

上を向いたまま、携帯の電源ボタンを押して遮断する。
そして乱暴にバッグに押し込めた。



何回か息を吸っては吐いて――……、そしてようやく落ち着きを取り戻した。
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