ある夏の思い出〜よつばの約束〜

夏の夢の始まり

これからどうしよう…

彰人と別れて1人になった私は、行く当てもなくふらついていた。当然私のことが見える人なんていない。

本屋でも探して小説読もうかと考え、本がプカプカ浮いてる様子を想像して固まる。

悩んだすえ、結局本屋に行くことにした。

本が浮いてると騒ぎになったって逃げればいいと思いながら。


記憶をたどって本屋を探す。それは思ったより簡単だった。死んでいるから記憶を呼び起こすのも簡単だったのかもしれない。

本屋について読みたかった本を引き抜く。そして周りを見回したが、誰もこっちを向いて悲鳴をあげたりしない。本は私の体と一緒に消えたらしかった。


その時、急にさみしくなった。誰にも気づかれない。

生きていたころ、いろいろ言われたりして正直うっとおしく感じる時があった。

でもそれは、とても素晴らしいことで。誰にも気づかれない存在となった私は初めてそのことを知った。


私は本を持って店員さんのそばに行ってみた。

無反応。

やはり私は存在していなくて、私が持った本も一緒に消えてしまったのだ。


辛くなって、少し泣いた。
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