ある夏の思い出〜よつばの約束〜
花火が見やすい穴場に行った。

私たち以外には誰もいない。

なんだかどきどきしている。


やがて花火が始まる。


「きれいね…」

「そうだな」

「こんなにきれいな花火って久しぶり」

彰人と見ているから…とは言えないけど。

「ねぇ…」

「どうした?」

「私が引っ越した時の約束…覚えてる?」

「当たり前だろ」

即答。

「…よかった」

嬉しすぎた。忘れられているのを覚悟していたから余計に。

「迎えに行く予定だったのに、先にきやがって…」

私は顔を上げて微笑んだ。

「私は『会いに行く』って言ったじゃない」

「…そうだったな」

手を握る力が少し強くなる。私も握り返した。

「幸菜…今更かもしれないけど…好きだ」

彰人は花火を見ながらそう呟いた。

するとちょっと手を引いた。

幸せすぎて、ぽろっと言ってしまった。

「嬉しい…私も今更だけど…大好き」


夜空の花に見守られながら、抱きしめられた。


なかったはずの、夢のような瞬間。
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