なくした時間にいてくれた
あとで聞いた話によると、後続の車が我が家の車に突っ込んで来たらしい。車が止まっていることに気付くのが遅れて、ブレーキを踏むのも遅れたとか。


意識を戻したとき、私は病院のベッドに寝ていた。


「楓花(ふうか)ちゃん、目が覚めたのね!良かったわー」


見覚えのない天井をどこだろうと見ていた私の前にまず飛び込んできたのは、涙を浮かべて喜ぶ母方の祖母の顔だった。


だけど、楓花ちゃん?

楓花はお姉ちゃんの名前だよ?

おばあちゃん、呆けちゃった?

まだ呆けるには早いと思うけど。


「花(はな)ちゃんはまだ目が覚めないけど、そのうち覚めるわね。今、お医者さん呼んだから待っていて」


「お、おばあちゃん。……えっ?」


祖母に名前が間違っていることを告げようと声を発したとき、驚いた。

なにこれ、私の声じゃない。

なんで私からお姉ちゃんの声が出てくるの?

お姉ちゃんと私は、顔が似てなければ声も似ていない。

まさか?
< 4 / 189 >

この作品をシェア

pagetop