遠回りして気付いた想い
「亜耶。もう限界だろ?おぶってやるから…」

門を出て直ぐに亜耶にそう声を掛ければ、無言でゆっくりと頷く亜耶。

「ごめんね、遥さん。ありがとう」

俺は、亜耶の前にしゃがみ込む。

亜耶が、ゆっくりと俺の背に体を預けてくる。

亜耶の腕が、俺の首に緩く纏い付いたのを確認して。

「立つよ」

俺は、ゆっくりと立ち上がり、そして歩き出した。

亜耶の家に向かって…。

「遥さん…」

亜耶が、耳元で俺の名を呼ぶ。

「ん?」

「メリークリスマス…」

「メリークリスマス」

亜耶は、俺の言葉を聞いてから、スースーと寝息をたて始めた。



亜耶…。

俺の大切な娘。

ちょっと、迎えに行くの遅くなったけど、頼ってくれて嬉しかった。

それだけで、俺は嬉しくなる。


背中に亜耶の温もりを感じながら、幸せに浸っていた。
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