遠回りして気付いた想い

相馬…相馬…。

俺は、そう呟きながら、一軒一軒確かめていく。

あ、あった。

二階建ての一軒家。

俺は、チャイムを押す。

ピーンポーン…。

チャイムが、家屋に響く。

『はい』

そう対応に応じたのは、大人になりきれてない少年の声だ。

親が出ないってことは、出払ってるんだな。

これは、益々ヤバイじゃんか…。

「高橋だが、亜耶を迎えにきた」

俺がそう言えば、玄関の電気が点いた。

玄関が開き。

「どうぞ」

何処となしか、無愛想な態度で、俺を中に入れてくれた。

何も聞かずに入れてくれるとは、ありがたい。

俺は。

「失礼するよ」

そう言うと、中に入る。

騒がしい、リビングに足を向ける。

案の定、亜耶の目はトロリとしていて、今にも眠ってしまいそうだ。

周りは、突然来た俺に唖然としている。

そんなの構ってる余裕も無い、俺だがそこは大人対応で。

「亜耶。帰るよ」

俺は、眠そうな亜耶を揺り起こす。

「遥…さん？何で…居る…の？」

亜耶が掠れた声で、俺の名を呼ぶ。

もう、起きてるのも辛いんだなと思いながら…。

「う…ん。帰る。遥さん、ありがとう」

亜耶の舌ったらずの言葉。

うっ…、ヤバイ。可愛すぎる。

俺は、平常心を保ちながら、亜耶にコートを着せる。

「亜耶。荷物は、これだけか？」

俺の問いかけに亜耶は。

「う…うん」

っと、ゆっくりと頷いた。

「ほら、帰るぞ。皆に挨拶して」

俺は、亜耶を支える様に立たすと。

「ごめんね。先に帰るね。おやすみ」

って、単語だけを並べて挨拶する。

そして、俺は亜耶の背に手を回し、亜耶は俺の腰に手を回してきた（無意識だろうけどな）。

「邪魔して、悪かったな」

俺も、そう一言だけ言って、亜耶を支えながら玄関に向かって歩き出した。

亜耶が、靴を履くのを見守り、玄関を出た。