恋の始まりは偽装結婚
 見ても何ら変わらないのに、もう一度スマホの画面を見ていると、急ブレーキの音が大きく辺りに響いた。

 車の急ブレーキのせいで、もっと砂埃が立ち、私は顔を顰める。

 それからゆっくり私から三メートルほどのところに停まった車に視線を動かす。

 真っ赤なオープンカーに、四人の高校生の男の子たち。こんなに暑いのに、ライダーズジャケットを着ている子もいて笑える。

 彼らはこの街で有名な不良高校生だ。このスポーツカーをよく見かけるから間違いない。

 まだ十時。学校の新学期は八月中旬から始まっている。おそらく新学期が始まって数日しか経っていないのに、学校を休んでドライブしているなんて。

 スパニッシュ系やチャイニーズ系、白人の男の子たちは車に乗ったままで、私と目が合うとニヤニヤ笑う。

 めんどくさい……今、英語で話しかけてくる彼らにかまっている心の余裕はなくて、無視することに決めた。


「お姉さん、どうしてひとりなの~?」

「俺たちが相手してやろーか?」

「もしかして逃げられた?」

「そんなヤツ忘れて、俺たちとパーティーしよーぜ。コスプレ大歓迎だぜ。ほら行こうぜ」


 無視していると、しだいに強引な話し方になってきて、彼らは車からひとり、またひとりと降りてくる。


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