【禁后-パンドラ-】
母親は2人または3人の女子を産み、その内の1人を『材料』に選ぶ。

男子が生まれる可能性もある筈だが、その場合どうしていたのかは不明だ。

選んだ娘には2つの名前を付け、一方は母親だけが知る本当の名として生涯隠し通される。

万が一知られた時の事も考え、本来その字が持つものとは全く違う読み方が当てられる為、字が分かったとしても読み方は絶対に母親しか知り得ない。

母親と娘の2人きりだったとしても、決して隠し名で呼ぶ事はなかった。

忌み名に似たものかも知れないが、『母の所有物』である事を強調・証明する為にしていたそうだ。

また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意した。

娘の10、13、16歳の誕生日以外には絶対にその鏡台を娘に見せないという決まりもあった。

これも、来たるべき日の為の下準備だった。

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