未来の君のために、この恋に終止符を。




晴樹が私のことを好きじゃないことなら、よく知っている。

少し意地悪な時もあるけど優しくて、なのに彼の態度はいつだって変わらなくて、幼馴染を大切にしているだけだ。



幼馴染以下になることがなければ、それ以上もありえない。

今の扱いが特別だなんて、勘違いは許されない。



私と彼ではスクールカーストにしても、人としての質でも、大きく違うこと。

彼にはもっと似合う人がいること。

彼を好きなのは私だけじゃないこと。



知ってる。

……よく、知っている。



だけど、それでも、私が想うのは晴樹だけだから。

はじめての告白に少し浮かれて、今までにないことにどきどきして、真剣に悩んで、それでも変わらないから。



この恋を大切にしていきたいんだ。



「そうじゃないかなって、実はずっと思ってました」



田中くんにそんなふうに言われてしまい、目を見開く。

晴樹が笑顔で私を大事な幼馴染なんて名言するものだから、裏づけとなり疑われたことなんてなかったのに。



「悔しいけど、晴樹はいいやつだし、告白もできたし。うん、いいです。……これでよかった」

「ありがとう……」



本当はいいはずなんてないのに、そんなふうに私が気にしないようにしてくれること。

好きになってくれたこと。

たくさんの意味をこめて言った感謝の言葉に、彼は「こちらこそ、ありがとうございました」と目を細めて、優しく笑う。



その笑顔はとても魅力的だったけど、それでも私には晴樹しか見えなかった。

なんだか無性に晴樹に、会いたくて、好きだと言いたくてたまらなかった。






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