未来の君のために、この恋に終止符を。

純粋な想い、不純な関係





天井も、壁も、ベッドも、なにもかも真っ白な空間で私は黙って上体を起こして腰かけていた。

ここはとても静かなところだった。



私は声を一切発していないけど、それでも目の前の彼────晴樹による泣き声が沈黙で包まれていた室内を埋め尽くしていく。

酸素が薄くなるように、声が出なくなるように。



目が醒めるとそこは病院で、両親と、それから担当してくれたらしい先生と話をした。

私が少し落ち着いた頃に病室を訪れた晴樹はずっとこの調子で、どうすればいいかわからない。



「……晴樹、私大丈夫だよ。生きてるし、元気」

「でも、……でも、実莉の腕が……っ」



そう言って、晴樹はひゅうと深く息を吸いこんだ。



彼の言葉が意味しているのは、麻酔か痛みどめか、薬の効果で感覚のない私の左腕のこと。



あの時、木から落ちた私の腕には近くの木の枝が刺さったらしい。

頭をぶつけたせいで意識を失っていたこともあり、結構な騒動だったとか。



でも無事に手術も終わり、腱に傷はついていなかったため後遺症もなく、脳にも異常がないとのことだった。

しばらくは生活で困ることもあるだろうけど、長い目で見ればたいしたことはない。



ただ、────この傷は自然に消えることはないと言われた。






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