未来の君のために、この恋に終止符を。




「行かない方がいい」

「え?」

「明日の映画は、行っちゃだめだ」



顔を上げて、まっすぐな瞳が向けられる。

焼かれてしまいそうに熱い、そんな熱を感じる視線だ。



「どうしてそんなこと言うの」



晴樹と共に過ごすのは、辛い。

自分と彼との違いを、差を、感じるから。

近くにいるのに、だからこそさみしくなるから。



それでも私は離れられないし、そばにいたいと思う。

……好きだから。



だからその時間を奪われるなんて、いやなんだ。



「その日、俺たちはデートの最中にクラスの何人かと遭遇した。
崇人とか、俺がよくつるんでるやつらと……菜津が来たんだ」



菜津────立川 菜津(たちかわ なつ)。

それは、この前晴樹に山を張ってもらっていた女の子の名前だ。



丁寧に巻いてある、キャラメル色のロングヘアの持ち主。

毎日完全な化粧で装備していて、派手な顔立ちをしている。



クラスの中で誰よりも晴樹への好意をはっきり示していて、私は正直に言って得意じゃない。



「そしてそのままみんなで観ることにして。
君はきっと……傷ついていた」



まるで本当にあった過去のように語られて、私はどんな反応を返せばいいかわからない。

何度ももしかして、という言葉が頭をよぎる。

それを首を振り、必死で振り切って、それでもまた不安が忍び寄る。






< 38 / 214 >

この作品をシェア

pagetop