未来の君のために、この恋に終止符を。




「あの時の俺は気づくことができなかったから、だから行かないで」

「傷ついたって、あんたには関係ない」

「関係ある!」



力強く言い切られて、私は自分の腕を押さえこむように握り締める。

痛いくらいに、ぎゅっと。

その様子を見て、晴樹はなにかを後悔しているかのように苦しそうな表情で、前髪をぐしゃりとかき混ぜた。



「俺は、君の彼氏だ。
……傷つかないで欲しいと、思っているんだよ」

「っ、」



優しい言葉。

私を守るばかりの、晴樹と変わらない、言葉。



ああ────嬉しくない。



「いらない。そんな優しさ、頼んでない」

「実莉……」

「調子よく忘れちゃった?
私はあんたが晴樹だなんて信じてないの。
だからそんなばかみたいな話も、信じられるはずがない」



綺麗な瞳がくすんでいく。

私に傷つけられ、ひびが入り、濁る。



ごめん。

なにもかもうまくやれなくて、こんなことばかり、……ごめんなさい。



だけど君は私に優しくするから。

私は君を、許せない。



「明日は晴樹と出かける。
歪んだ私たちの、関係を恋人にするためだけの、愛のないデートに行く」

「……」

「口出しなんてしないで」



震えないで、悲しみなんて表さないで、ただ心を凍らせる。

ぼろぼろの心を捨て置いて、私はこのまま突き進むんだ。

多分、死ぬまでずっと。






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