未来の君のために、この恋に終止符を。




黙って足を進めると、移動先の教室に着く。

扉を開けようと手を伸ばした。



そんな私の心は、ふたりにほだされたようにわずかに緩んでいる。

その隙間を突く言葉が、その瞬間耳に入った。



「ねぇ、聞いて聞いて!
あたしね、晴樹と花沢さんが付き合うようになった理由知ったんだ!」



心臓が痛くなって、吐き気がする。

呼吸が辛くて、苦しくて、どきどきという自分の鼓動がうるさくて仕方がなかった。



教室から聞こえる声は、なに? だとか、知りたいだとか、私が望まないものばかり。

とうとうと語る声の主は、私にさえもわざとらしく同じトーンで言葉を紡いできた女の子。

────立川さんだ。



「なんかね、同じ中学だったって子から聞いたんだけど、晴樹が昔花沢さんに怪我させちゃったんだってー。
確か腕のところ? まだ傷残ってるらしいよ」

「だから花沢さんって夏でも長袖なんだ?」

「そうらしいよー」



話題にあがってしまった左腕をぎゅっとつかむ。

ぎりぎりと爪が食いこんでなお、やめられない。



「だから、晴樹はその償いで付き合ってるんだってー」

「えー、やだ、それで?」

「なにそれ、花沢さんひどーい」



言葉が頭にがんがんと響いている。

ぐるぐると回るのは、あっけなく暴かれた事実。

私と晴樹の歪んだ過去。



「花沢さんに晴樹は似合っていないのにね」






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