スノウ・ファントム
「キナコは考えすぎなんだよ。……前の俺と一緒で」
呆れたような口調で言われて、私は余計に落ち込んでしまう。
この間は本音をなかなか口に出せない私に共感してくれたのに、今日のルカはなんだか少し冷たい。
私が、告白を断ってしまったからかな……。
「……それは違うよ。ま、いいや。そのうち、キナコには俺だけしか見えなくなるから」
「どういう意味……?」
「さぁね」
抑揚のない声で言うと、私の傘を持ったまま先を歩いていってしまうルカ。
その背中には明らかに不機嫌さが滲んでいて、追いかけることを躊躇ってしまう。
そのまましばらく後姿を見つめていると、数メートル先でルカは急に立ち止まり、「ああもう!」と声を荒げながら頭をがしがしと掻いた。
それが落ち着いたかと思うと、突然にこちらを振り返って、ひとこと。
「……ゴメン、キナコ、今のなし」
へらっと笑ったルカだけど、その笑顔があまりに弱々しくて、胸がきゅ、と締め付けられるのを感じた。