スノウ・ファントム


「俺が、殺すわけじゃない……」



うわごとのように呟いて、脳内で繰り返し流れる葉村の映像をなんとか消し去る。

そして、俺はキナコに会いに行くため階段を下りて行った。


俺は普通の人間になれたんだと、早く報告しよう。

これからは、ずっと一緒にいられる。

しかも同じ学校の同じクラスだなんて、うれしくない?

そう明るく言ったら、キナコも笑ってくれるだろうか。


(笑って……くれる、かな)


どんな説明をしたら、言い訳をしたら。

俺は、自分のしたことを正当化できるんだろう。


もう迷わないと決めたはずなのに、そんな疑問ばかりが頭の中をぐるぐると回っていた。



< 93 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop