スノウ・ファントム
◇真意


バレンタインの日の朝、目覚めてすぐにドキドキしながら窓の外を見ると、一昨日積もった雪はまだ少し残っていて、朝陽をきらきらと反射していた。


(よかった……)


昨夜のうちに用意していたチョコを手にして家を出ると、窓から覗いたよりもずっと辺りが明るくそしてあたたかかった。

このままだと、午後には雪、溶けちゃう……?

不安になった私は辺りをキョロキョロ見回して、小さく呼びかけてみる。


「ルカ……いま、近くにいない?」


しばらく待ったけれど返事も気配もなく、私は仕方なくひとりで駅に向かった。


駅に着くと、二階にある改札を通ってホームへ続く階段を下りる。

すると、ホームの端の方へと歩いていく葉村くんの背中を見つけた。

今日の彼はなんだか背筋がぴんと伸びていて、いつもより元気そうに見える。


(話しかけて……みようかな)


教材室で彼と閉じ込められてしまったとき、本当はもっといろいろ話がしたかった。

葉村くんの抱える“事情”……やっぱり、ルカを頼るんじゃなくて、自分で聞いてみよう。


< 94 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop