素敵な夜はあなたと・・・

「彼とは別れろ。別れなければ俺は彼に伝えなければならない。それでもいいのか?」


 優也の脅迫めいたセリフに茜はかなり腹立たしく感じた。自分は母親と不倫しておきながら、妻の浮気を認めないと言うのかと。それに、誰にも知られなければ優也と美佐の秘密の関係は続けられると思っているのだろうかと茜は悔しさが増して来た。

 すると、優也の顔を見て思いっきり笑った。こんな緊迫した会話をしてい乍ら笑いが出るのは気が変になったせいじゃないかと自分でも不思議なくらいだ。


「何がおかしい? 俺はあの男に俺達の関係を正直に話すと言ったんだぞ。」

「どうぞ、お好きなように。もし、結婚の事実を彼に話せば私も全てをお祖父ちゃんに暴露するわよ。覚悟しておいて。」


 茜はそれだけ言うと車から降りてしまった。

 優也は茜が会長に全てを暴露すると話したその「全て」とは何を意味するのだろうかと一瞬心臓が止まるかと思った。まさか、茜に美佐への求婚を知られてしまったのだろうかとかなり緊張が走った。

 茜との結婚に応じてしまった後で、茜とは関係を持たずに母親の美佐へ未だにアプローチをしているのを、今の時点で会長に知られるのは優也にとっては都合が悪かった。

 美佐からの承諾を貰うまではまだ茜の夫でいる必要があった。今の優也が舞阪家の一員である為にはこれしか方法がなかった。


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