素敵な夜はあなたと・・・

 兎に角、今は早く家に帰り、その後に茜と優也は話し合う必要があった。誰の目にもこの新婚旅行は子作り旅行だ。しかし、茜は勿論のこと優也にもその気はないのだからこの旅行は苦痛にしかならない。


 車を走らせている間は、優也は事故を起こさない様に運転に集中したかった。どう見ても茜より優也の方が動揺を隠しきれない。


 茜は名ばかりの新婚旅行なのだから旅行を楽しんでくればいい、と、お気楽に考えているはずだ。それが出来れば優也はどれほど気が楽になるのか。かなり追い詰められているのは優也の方だった。




 マンションの駐車場へ車を停めた後、優也は考え事をしていたからかエンジンを止めずハンドルを握ったままの状態で視線はどこか遠くを見ていた。そんな優也が不思議に感じた茜もまたシートベルトを外せずそのまま優也の顔を眺めていた。


 それでも身動き一つしない優也が心配になった茜はハンドルを握る優也の手に自分の手を重ねた。



「どうしたの?」

「え?あ?ああ、ごめん。」



 茜の手が重ねられたことに気付いた優也は、慌ててハンドルから手を離すとシートベルトを外した。まるで払い除けられた様に感じた茜の手は行き場を失ったかのように動かせなかった。


 その手に気付いた優也は直ぐに運転席のドアを開けて外へと出てしまった。

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