クールなCEOと社内政略結婚!?
 さっきまでの恐怖なんて、すっかりどこかに行ってしまった。今の私の心も体もすっかり孝文に支配されている。

 大きな手のひらが、私の頬に添えられた。ゆっくりと後ろに向かされると、熱っぽい孝文の視線とぶつかる。

 それまでの悪戯じみた感じではなく、真剣な表情。その意味を理解した私は、自然にゆっくりと目を閉じた。そうすることが正しいと、本能が教えてくれる。

 ゆっくりと唇が重なった。

 その瞬間、ドキンと大きく鼓動が跳ねる。そのあとドンドン加速していく。

 最初は、本当に触れただけだった。けれどすぐに押し付けるように、孝文の唇がもう一度重なった。角度を変える度にどんどん深くなっていくキスに、私は溺れていく。

 やがて唇を割って入ってきた孝文の舌に、私は簡単に捉えられてしまう。それに応えるだけで精一杯だ。

 孝文の手が私の手を絡め取り、強く握りしめた。

 徐々に首筋を伝って襟元からその先を唇が目指す。

 ドキドキと高鳴る鼓動は、急な展開への驚きとこの先への期待の表れだろうか。

 ひとつ確かなことは、私は孝文を受け入れているということだった。この先に何が起こるか理解して、そして彼にすべてを預けようと思っている。
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