クールなCEOと社内政略結婚!?
「たぶん、俺が作らせた抜け道だろうな。こいつくらいなら通れるから」

 あ、そんな話さっきしていたっけ?

「しかしコイツは、なんてタイミングで入ってくるんだよ」

 孝文に耳を引っ張られたあずきはそれでも嬉しそうだ。

 たしかに、これからってところだったのに……いや、それじゃあ私がやる気満々みたいじゃない。そうじゃないけど、でも残念だという思いもある。

「完全に、萎えたな」

 孝文はベッドから降りて棚に置いてあった高そうなブランデーを手にとると、簡易キッチンからグラスと氷を持ってきた。

「お前も飲むか?」

「ううん。やめておく」

 そこまでお酒に強くはない。それにさっきの余韻が実はまだ残っていて、うっかり変なペースで飲んでしまいそうだから自粛した。

 手持無沙汰になった私は、部屋のなかの本棚を何気なく見た。洋書や児童書などに混ざりえんじ色の分厚いアルバムを見つけて手にとる。

「これ……孝文?」

 お母様がアルバムはここにあるって言ったのは、嘘じゃなかったんだ。
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