クールなCEOと社内政略結婚!?
 食事を終え、自宅マンションへ帰るためタクシーを待つ。

「ごちそうさま。パパ、久しぶりの日本なのに日本食じゃなくてよかったの?」

 そういえば、帰国時は日本食を食べることが多いのに、今回は中華料理だった。

「あ、言い忘れてた。今週の土曜日にいい和食の店が予約できたんだ。あさ美はなお美の振袖を着て一緒に食事をして欲しいな」

 振袖かぁ……面倒だな。でもきっと断るほうが、また父の号泣がはじまってしまって面倒だ。それにきっとこの先あまり振り袖を着る機会もないだろう。

「うん。わかった。じゃあまた連絡するね」

 私はそう言い残すと、タクシーに乗り込んだ。

「じゃあね。また連絡する」

「やっぱりパパも、あさ美のマンションに泊まりたい」

「やめてよ、狭いんだから。ワガママ言って俊介に迷惑かけないでよ」

 まだなにかグズグズ言っている父を置いて、私は運転している俊介に車を出すように伝えた。

 ……疲れた。いくら遺伝子上は親子といっても、普通の親子関係とは程遠い。それでも母を大事に思う気持ちで、父と私は繋がっているのだ。


--彼の暴走を知るときまでは、私はそう思っていた。

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