クールなCEOと社内政略結婚!?
『……もしもし』

「いったい、どーいうことなんですかっ?」

 私は相手も確認せずに、電話に出た男に噛みついた。確認しなくたって、相手が誰だかわかる。

『朝っぱらからうるさい』

 その朝っぱらから、こんな事件を巻き起こした張本人が何を言う。

「どうして、いきなり引っ越しなんですかっ? 社長!」

 私の声に、目の前にいる引っ越し業者の女性がビックリしている。彼女だって迷惑な話だ。依頼された先に向かったら、こんな状態になっていたなんて。きっと初めての経験だろう。

『お前が日付を決めないから、俺が決めた』

「何、勝手なことしてるんですか? 私の意見も聞かずに」

『俺がわざわざ聞いてやったのに、お前が答えなかったのが悪い。そこに居座ってもいいんだぞ。まぁ、仕事クビになったら、そこにも住んでいられないだろうけどな』

「そんなっ! 言われた通りにサインしたのに――」

『安心しろ、ちゃんと作業員は女性ばかりにしてある』

 そう言った途端、電話はブチんと切れた。私は再度かけなおしたけれど、直に留守番電話につながるようになってしまう。

「あいつ!」

 毒を吐く私に、目の前の女性が困った表情で私を見つめた。

「あの……本日はこの後にも予定が入っておりまして……」

 本当に困った顔だ。これ以上関係のない人に迷惑をかけるわけにはいかない。私は扉を大きく開いて「どうぞ」と声をかけた。

 ……とりあえず、着替えなくちゃ。

< 49 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop