コクリバ 【完】
「先輩。ここはいいからあっちで待っててください」
菊池雅人の前で、高木先輩と話すのは緊張した。
でも、料理の手際の悪さを高木先輩に見られる訳にはいかない。
「いーじゃん。セイヤも手伝えよ」
そんなことには全くデリカシーのない菊池雅人は、高木先輩も仲間に入れようとしている。
「あっち先輩ばっかで緊張するからさ」
高木先輩は長い脚でキッチンに入ってくる。
どうしよう……
「奈々。ジャガイモ出すぞ」
菊池雅人が勝手に床下収納を開けようとしている。
「それ私やるから!」
慌ててその前に行こうとするけど、テーブルと冷蔵庫に挟まれた狭い通路は一人しか通れない。
「おまえ慣れてんなー」
高木先輩は、テーブルの反対を通りその横にしゃがんだ。
我が家の床下が、高木先輩の前に晒された。
もう、諦めるしかなかった。
高木先輩と菊池雅人と私、3人並んで料理をしている。
たぶん誰に言っても信じてもらえないだろうこの状況。
でも、一番信じられないでいるのは私かもしれない。
「奈々。まつ毛くらい取って来いよ」
菊池雅人がジャガイモを剥きながら、私を見て言った。
高木先輩もわざわざ手を止めて私を見ている。
「変ですか?」
高木先輩のために綺麗になろうと思ったのに……
「ふっ。タヌキみたい」
先輩が笑いながらそう答えた。
顔がひきつる。
ちょっと泣きそうになりながら、無言で包丁を置いて、メイクを落として来ようとキッチンを出る。
なのに、高木先輩が後ろからついてくる。
「なんですか?」
「どこ行く?」
「……部屋です」
腕を軽く押す先輩。
早く行けよ、という感じだけど、
「なんですか?ついてこないでください」
「なんで?」
「なんでって……」
「奈々の部屋見たい」
左頬で笑って、切れ長の目が悪戯っぽく細められた。
その顔は反則だと思う。
菊池雅人の前で、高木先輩と話すのは緊張した。
でも、料理の手際の悪さを高木先輩に見られる訳にはいかない。
「いーじゃん。セイヤも手伝えよ」
そんなことには全くデリカシーのない菊池雅人は、高木先輩も仲間に入れようとしている。
「あっち先輩ばっかで緊張するからさ」
高木先輩は長い脚でキッチンに入ってくる。
どうしよう……
「奈々。ジャガイモ出すぞ」
菊池雅人が勝手に床下収納を開けようとしている。
「それ私やるから!」
慌ててその前に行こうとするけど、テーブルと冷蔵庫に挟まれた狭い通路は一人しか通れない。
「おまえ慣れてんなー」
高木先輩は、テーブルの反対を通りその横にしゃがんだ。
我が家の床下が、高木先輩の前に晒された。
もう、諦めるしかなかった。
高木先輩と菊池雅人と私、3人並んで料理をしている。
たぶん誰に言っても信じてもらえないだろうこの状況。
でも、一番信じられないでいるのは私かもしれない。
「奈々。まつ毛くらい取って来いよ」
菊池雅人がジャガイモを剥きながら、私を見て言った。
高木先輩もわざわざ手を止めて私を見ている。
「変ですか?」
高木先輩のために綺麗になろうと思ったのに……
「ふっ。タヌキみたい」
先輩が笑いながらそう答えた。
顔がひきつる。
ちょっと泣きそうになりながら、無言で包丁を置いて、メイクを落として来ようとキッチンを出る。
なのに、高木先輩が後ろからついてくる。
「なんですか?」
「どこ行く?」
「……部屋です」
腕を軽く押す先輩。
早く行けよ、という感じだけど、
「なんですか?ついてこないでください」
「なんで?」
「なんでって……」
「奈々の部屋見たい」
左頬で笑って、切れ長の目が悪戯っぽく細められた。
その顔は反則だと思う。