コクリバ 【完】
「セイヤ。どこ行くんだよ」
後ろで菊池雅人が呼んでいる。

「先輩。呼ばれてますよ」
「だから早く行けよ。すぐに戻るから」

先輩が私の腕を押しながら階段を上り始めた。

そんなに散らかっている訳ではないけど、来るなら来ると前もって言ってほしい。
そしたら、それなりに準備したのに

たぶん先輩はそんな私の気持ちなんてお見通しで、嬉しそうに急かしている。

階段の途中でもたもたしていたら菊池雅人が現れて、押し合いしていた私たちはバッチリその姿を見られてしまった。

「セイヤ!上には行くな!」

菊池雅人が小さな声で目いっぱい威嚇している。
大声だとリビングに聞こえるからだろうけど、それでも高木先輩が上がろうと私を押すから、
「何やってんだよ」
菊池雅人が高木先輩の腕を掴んで引きづり下ろした。

「悪いな、奈々」
菊池雅人はそのままキッチンに戻って行くようだ。
その腕はしっかり高木先輩を掴んでいる。

高木先輩は最後に妖艶に私を睨んで引っ張られて行った。
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