コクリバ 【完】
母がやるとあっという間にカレーは出来上がり、美味しそうな匂いが漂っている。

人数分のカレーを高木先輩と菊池雅人が運んで、二人はそのまま中で食べるようだった。
私は母とキッチンで向かい合い、具材の大きさがバラバラなカレーを食べた。

「お母さん。夏休みさ。私も料理手伝うね」
「何?できなくて恥ずかしかったの?」
「……」

直球過ぎだよお母さん。もう少しカーブをかけてくれればいいのに……

「奈々が携帯持ちたいって言いだしたのは彼のため?」
「え……彼って?」
驚いて母を見ると、その問いに母はニヤリと笑うだけで、
「それも彼にもらったの?」
母の目線がペンダントに移っている。

「これは違う。中山さんにもらったの」
「ふーん。じゃ中山君にはあとでお礼言わなきゃね」
「うん。お兄ちゃんのいないとこでね」
「で?高木君からは何もらったの?」

手にしたスプーンを落としそうになった。
母は楽しそうに笑っている。
自分の親だけど、意地悪な性格だと思う。

「な、んで…」
「なんで分かったかって?そんなの簡単よ。クロスワードより簡単」

母は得意気だった。
最近母がハマっているクロスワードクイズは私の方が正解率が高いのに、どこでバレたのか全く分からない。
< 120 / 571 >

この作品をシェア

pagetop