コクリバ 【完】
「奈々……」
「はい」
「早く、大人になれよ」
「もう大人ですよ」
「ふっ。まだ子供のくせに」
「この前、大人になりました」
「俺のせいか?」
「何、言わせようとしてんですか?」

先輩の右手が私の頬を撫でている。
大きな手は暖かい。

「もう、しない」
「え?しないんですか?」
「したいのか?」
「な、いや……じゃなくって、何か……その――、違ったんですか?」
「おまえ、ウケる」

本当にのけ反るように笑いだす先輩。

「そこ笑うとこじゃないです」
「奈々が18になるまで、しないってことだよ」
「ダメでしたか…」
「落ち込んでんなよ。可哀想に思ったんだよ。だから早く大人になれ」
「分かりました。早く大人になります。だから、絶対、待っててください」
「おまえ……マジ、ウケる」

私の肩に額をつけて笑う先輩。

「先輩!」
「17な。あと2年は、俺が待てない」

そう言うと先輩の手が顎に伸びてきて、後ろを振り向かせるようにして、

唇が重なった。
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