コクリバ 【完】
ようやく痛いほどの日差しが薄れてきた頃
「奈々。3年生いるよ」
私が高木先輩探しをしていることを知っている絢香は、その習慣が伝染ったのか一緒に探してくれるようになった。

1年1組の私の教室は3階の端にあって、昇降口から校門へと続く道がよく見えた。
一際背が高い高木先輩は見つけやすく、ほとんど毎日少し窓に隠れるようにしてその姿を見つめていた。

数名の3年生が通った後、高木先輩が菊池雅人と一緒に昇降口から出てきた。
「来た!」
隣りで一緒に見ていた絢香が声を出す。

慌てて絢香を引いて窓の下にしゃがむと、絢香と二人しゃがんだままニヤニヤした。
今にも叫び出しそうな口元は両手で隠して……

もう一度顔を出した時、高木先輩が3階の教室の方をじっと見上げていた。
隣りの菊池雅人も同じようにこちらを見上げている。

先輩が左頬を上げるのと、菊池雅人が苦笑するのとは同時だった。
先輩と眼が合っただけで嬉しくて、いますぐ駆け下りたいような気持ちになる。

先輩がNIKEのバッグを抱え直した時、その横にぶら下がっている銀色の物が見えた。

シルバーのクロスのストラップだった。

先輩が私にだけ分かるようにストラップを触るから、胸がキュウと鳴る。
まるで自分が触られているかのように……
頬が熱くなるのを慌てて手の甲で隠した。

先輩が校門の外にゆっくり歩いて行くのをずっと見ていた。

少し引きずったように歩く独特の歩き方。
自転車を押す腕の筋肉。
隣りの菊池雅人と笑い合っているときの笑顔。
どれも素敵。


高木誠也の姿を見ただけで、倒れそうなくらい幸せだった。
多くを望んでいたわけじゃない。
ただ彼を見ていたかっただけなのに……
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