コクリバ 【完】
それは金曜日の放課後だった。

絢香とじゃれ合いながら美術室に入った時に、その話が聞こえてきた。

「さっき先生が嬉しそうに話してた」
「本当?市原先輩すごいよね」
「先輩は?今日部活来るかな?」
「あ!緒方さん」

私が入ってきたことに気付いた2年生の先輩が、ニコニコと私を手招く。

「どうしたんですか?」
「緒方さん、まだ聞いてないの?」
「やだ。モデルなのにまだ知らなかったの?」

私の周りには人垣ができて

「市原先輩の作品が入賞したって!」
「しかも県展の方じゃなく、東京のやつだよ」
「えー!」

絢香と目を見合わせて驚いた。

県単位の美術展に入賞することも難しいのに、いきなり全国区で入賞だなんて普通は考えられない。

「先生が絵を見てこっちに応募しなさいって言ったらしいよ」
「奈々ちゃんがモデルやったやつだよね?」
「すごいね」
「おめでとう、緒方さん」
「いや、私は何も……」
「早く市原先輩来ないかなー」

美術室が騒然とした日だった。
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