コクリバ 【完】
「市原先輩は?言ってくれるんじゃなかったの?」

絢香の疑問はスルーされて、ともちゃんが私も一番気になることを口にする。

「市原先輩……反対のことを言ってるみたいで……」
「反対のこと?」
「うん、なんか私と本当にシたみたいなことを言ったんだって」
「それはフェイクでしょ?高木先輩には本当のこと言っておくからって、あの時ちゃんと言ってくれたよ。私もちゃんと覚えてるよ」

絢香が口を尖らせている。

「うん。でも高木先輩は全然違う方を聞いてるっぽかった」
「なんで?」
「だからね、私もそう思って、昨日、市原先輩に電話してみた」
「うん」
「そんなこと言ってないって。本当のことは伝えたって……」
「伝えたって?」
「そう、ちゃんと言ったって」
「本当?」
「市原先輩がそう言ったの」
「じゃ、なんで、高木先輩は戻ってこないの?」
「……」
「……」
「……」
「…奈々ちゃん。泣かないで……」

二人の顔が涙で歪んでいた。
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