コクリバ 【完】
緊張の研修の日が始まった。

早朝から洋祐先生に迎えに来てもらい、濃紺の国産車に乗り込み会場を目指す。

車内でも話題は今日の研修内容と講師の先生について……始まる前からそれだと今日一日分の記憶する容量が足りなくなると思います。

会場はこの地域で一番大きいホールを貸し切ってあって、午前中は討論形式でのパネラーの先生方のディスカッション。
それを洋祐先生の隣りで必死にメモを取りながら聞いていた。

午後は場所を移して、小グループに分けての様々なケースについての意見交換。

洋祐先生は別の部屋で、園長たちへの勉強会に参加するらしい。

堂々としたスーツ姿の洋祐先生は、私と違ってすんなり入っていけるだろう。

別れ際、笑顔で肩を叩かれた。

激励?それともミスするなっておどし?

どちらにしても一人不安になりながら会議室に入った。


17時になって、今日の全てのスケジュールが終わったときにはどっと疲れていた。


「皆様、本日はお疲れ様でした。このように県内の幼児教育に携わる方々が一堂に集まるという機会も滅多にないでしょうから、この後、意見交換や名刺交換などされてはいかがでしょうか?別室に軽食をご用意いたしました。どうぞあちらの会場の方へお越しくださいませ」

主催者のお偉いさんが出口の扉の向こうを、嬉しそうに手で示している。

恐る恐る隣を見ると

「行きましょうか」

……ですよね……はぁ

当り前のように洋祐先生は別室へと歩いて行く。

他の幼稚園から来ていた普通の先生たちは帰っていくようだったけど

さっきの小グループで一緒になり仲良くなった先生も、
「お先に」
と言って帰っていった。

一人で来ていたら、絶対帰ったのに……
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