コクリバ 【完】
「奈々。俺は、おまえを大事に思っている。できればずっとそばにいてやりたいと思う。だけど、それが、できない。もし、おまえが寂しい思いをするのなら、待たなくていい。自由に、好きにしてくれてていい……」

「好きにしていいの?」

「……あぁ」

「本当に私の好きにしてていいの?」

「……おまえが、そうしたいのならな」

「……」

「……」

私は椅子から立ち上がり、向かいの椅子に座っている彼の膝に乗った。

整った顔を覗き込むと、褐色の瞳が揺れている。

唇をゆっくりとその瞼に近づけていく。

瞼にキスをする直前、まつ毛が離れていった。

何度も何度も瞼や頬やおでこにキスをした。

彼は目を閉じ私からのキス攻撃を受け続けている。


「誠也……」

「ん」

「……なんで、待ってろって言わないの?」

その瞬間、閉じていた目が開いて、私を捉えた。

「なら、待ってるって言えよ」

クスリと笑ったとき、頬を押さえられ、唇が重なった。
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