コクリバ 【完】
背中に回る彼の腕の力が強くなる。

唇を離した彼は、私の胸元に顔を埋めた。

「いいのか?」

その声が鎖骨の辺りで振動となって響いてくる。

「怖いの?」

「……あぁ」

「大丈夫だよ」

「……奈々」

「うん」

「……愛してる……」


足元から頭の先まで一瞬で電流が走ったように震えた。

「誠也……」

彼の頭をギュッと抱えて、熱くなる胸の奥の広がりを感じた。

涙がこぼれそうになったから、天井を見たけど、堪え切れなかった涙が閉じた瞼から流れ落ち、頬をつたった。



この人を好きになって良かった。

あのとき、会いに来てくれて、本当に良かった。
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