コクリバ 【完】
途端に胸が息苦しくなった。
市原先輩はキャンバスに向き直り無言で作業を再開させる。
ドアの方からは何の音も聞こえてこない。
本当に高木先輩の声だったのか、聞き間違えたのかもしれない。
なんて思った時、
「高木。ドア閉めろよ」
市原先輩がそっちを見ないで言った。
やっぱりいたんだ。
「ドア閉めたら見えねぇだろうが」
高木先輩の低い声にどうしようもなく胸がドキドキする。
「終わるまでいる気か?」
「もう終わんだろ?」
「いや。まだ全然」
二人とも不機嫌そうな言葉の応酬。
私のとこから見える市原先輩は明らかに迷惑そう。
やっぱりこの二人は仲良いのか、悪いのかよく分からない。
ガラガラとドアの閉まる音が聞こえて、高木先輩が中に入ったのか外で待ってるのか、
私の感覚は耳にだけ集中した。
スリッパを引きずって歩くような音が聞こえる。
だんだん近づいて来ているようだった。
私の鼓動もドキンドキンと大きくなる。
「覗くなよ」
市原先輩が不機嫌そうに言うと、スリッパの音は早くなった。
「よう」
市原先輩の横にある衝立の切れ目から、高木先輩が顔を出した。
市原先輩はキャンバスに向き直り無言で作業を再開させる。
ドアの方からは何の音も聞こえてこない。
本当に高木先輩の声だったのか、聞き間違えたのかもしれない。
なんて思った時、
「高木。ドア閉めろよ」
市原先輩がそっちを見ないで言った。
やっぱりいたんだ。
「ドア閉めたら見えねぇだろうが」
高木先輩の低い声にどうしようもなく胸がドキドキする。
「終わるまでいる気か?」
「もう終わんだろ?」
「いや。まだ全然」
二人とも不機嫌そうな言葉の応酬。
私のとこから見える市原先輩は明らかに迷惑そう。
やっぱりこの二人は仲良いのか、悪いのかよく分からない。
ガラガラとドアの閉まる音が聞こえて、高木先輩が中に入ったのか外で待ってるのか、
私の感覚は耳にだけ集中した。
スリッパを引きずって歩くような音が聞こえる。
だんだん近づいて来ているようだった。
私の鼓動もドキンドキンと大きくなる。
「覗くなよ」
市原先輩が不機嫌そうに言うと、スリッパの音は早くなった。
「よう」
市原先輩の横にある衝立の切れ目から、高木先輩が顔を出した。